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 薬剤師教育研究企画委員会 副委員長 福室憲治 (東京薬学情報研究所所長 元東京理科大学薬学部教授)
1.企画作成の理念
基本的に薬剤師は医薬品という物質の専門家です。医薬品とは疾病の診断、治療、予防に用いられるものであります、そのために薬剤師は物質側の知識ばかりでなく、生体側の知識も必要となります。医療現場における薬剤師が果たすべき責務は、当然のことながら薬学に立脚しているものです。すなわち薬剤師が行う業務は、薬科学、医療薬学などを含む薬学という基盤の上に成り立つものと考えます。そこには薬学領域における多くの研究業績、薬局業務等の薬学の実践・実務における多くの実績等が蓄積されています。
一方、薬剤師業務に必要な知識は薬学領域ばかりではなく、他の学問分野についても必要とするところがあります、薬剤師にとってそれらについての知識も習得することが望まれます。
「ファーマストリーム」の講義を企画立案するに際しては、上述した“薬剤師業務は薬学の基盤の上に成り立つ”とする考え方を基本とします。そして薬剤師業務に必要な知識と技術についての講義企画は、薬学領域の基礎を重視すること、これを「ファーマストリーム」企画作成の理念としています。これはまずしっかりとした基礎を身につけることが大事とする考え方に由来するものです。
2.企画作成の方針
薬学領域の基礎を重視した「ファーマストリーム」の企画作成の方針は、薬剤師生涯教育ばかりでなく、薬剤師再教育にも利用可能な企画とすることが含まれます。基本的な企画作成の方針を以下に記します。
- 講義の体系化
講義を学び易く、理解し易くするために、講義の流れを出来るだけ体系的になるように講義題目の配列に工夫をしています。 また薬剤師の業務に関連する講義では、薬局業務の流れにしたがって順次に講義題目を設定することで体系的な講義としています。
- 基礎編と実務編
講義は基礎編と実務編に分けて講義の選択を容易にしています。 基礎編の講義は、薬学教育において学んだ専門教育科目のダイジェスト版に最近の進歩を加味した内容で構成されるもので、その専門領域の導入部から最先端までの講義となっています。 実務編の講義は、薬剤師の実務に関連する知識と技術を講義するもので、それには薬剤師が関わる薬局業務の流れにしたがって構成するものと、薬剤師の業務は多岐に亙るところから、薬局業務の流れに関係なく構成するものとがあります。前者は主に調剤(広義)に関するものであり、後者は調剤以外のものに関するものです。
- 企画のシリ−ズ化
講義を体系的に順序を追って重ねて行くために、基礎編、実務編ともにシリ−ズとして企画を作成するものが多いです。
- 複数の教育科目統合型講義
薬科大学、薬学部の講義は、個々の教育科目の講義を受けますが、医療現場においては複数の学問分野の知識を動員して総合化することで問題解決を図ることが多いです。 「ファーマストリーム」の講義では、必要に応じて大学の教育科目とは異なる複数の教育科目を統合した型の講義を企画しています。既に配信しているものに、有機化学と薬理学を統合し、構造活性相関の理解のために企画した「物質の化学と薬理作用」がその例です。
- 受講者のニ−ズに合わせた企画
「ファーマストリーム」を開講した当初は、企画委員の発想が主体となって企画を作成していたが、企画の経験を積み、受講者の増大により、部分的ではありますが、受講者のニ−ズに合わせた企画を作成することが出来るようになりました。
- トピックスについて
薬剤師を取り巻く環境は目まぐるしく変化しており、「ファーマストリーム」としてその変化に対応すべくその時々の話題を「トピックス」として提供する努力をしています。
- 専門別の教員を動員
講義を担当する講師陣については、専門分野別に教員を動員しているますが、薬剤師教育研究企画委員会は講義内容の質を担保する責務を担います。そのために講義を担当する講師の資質条件について、委員会の内部規定を設けて講義内容の質を担保することにしています。
3.今後の展望
薬剤師の職種はかなり幅が広く、職種により知識レベルに段差があることも否めません。すべての職種の薬剤師に通用する企画の作成は難しく、職種に応じた企画が必要と思われます。
従来の「ファーマストリーム」は、主に保険薬局の薬剤師を対象に企画を考えてきました。しかしそれだけでは「薬剤師生涯教育」を標榜する薬剤師教育研究企画委員会として責務を果たすことは出来ないと考えています。
今後への期待は、医療に従事する薬剤師の生涯教育に十分な役割を果たせるように新たな企画を提供することです。それには薬剤師職能の高度化に対応した企画や、専門性を追求した企画など、今後に期待する企画は山積です。
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