粟津莊司前委員長の後任として、2022年4月に委員長に就任しました林 正弘です。 私はこれまでに、47年間にわたり、複数の大学薬学部において、教員として教育研究に従事し、多くの薬剤師を世の中に送り出してきました。薬学教育は2006年に修業年限が6年制に移行しましたが、その際に私は、今後の薬学教育の進むべき道、そして移行後の薬剤師教育の重要性を探るべく、種々の議論を繰り返してきた経験を有しています。こうした経験を活かして、現在薬剤師として活躍している皆様のさらなる発展のために、少しでもお役に立てるように、努力していきたいと思っています。

薬学教育は、医薬分業の進展、医療技術の高度化に対応するためには、質の高い薬剤師の養成が必要であり、そのためには4年間の教育では不十分であり、2年間の年限延長となりました。そして、モデルコアカリキュラムに従った教育がスタートしたわけです。それまでの4年制教育は、どちらかと言うと物質志向であったのに対し、現在の薬剤師業務は完全に患者志向(対人業務)にシフトしており、それに応じて6年制教育の内容も大きく変化してきました。現在のモデルコアカリキュラムでは、卒業するまでに修得すべき能力として必要とされる10項目の「薬剤師として求められる基本的な資質」が示されています。その中には、「薬物療法における実践的能力」、「地域の保健・医療における実践的能力」など、薬剤師としての重要な能力が掲げられています。更に注目すべき項目として、「自己研鑽」が挙げられます。すなわち、薬剤師は、患者が安心して医薬品を使用可能となるように、適切な医薬品情報を提供し、服薬指導を行うことが必要です。一方では、現在のように医療技術の高度化や専門分化が進展する中、よりよい医療を患者に提供するために、薬剤師は必要な知識及び技能を習得する必要があり、そのために生涯学習は重要となります。生涯学習と言っても、簡単なことではありません。6年間で習得できなかった最先端の内容、ましてや4年制の薬学教育を卒業した薬剤師にとっては受講していない内容を、効率よく勉強する手段が必ず必要になります。

そのような状況下、ファーマストリームは薬剤師生涯教育研修に資することを目的として、設立されました。常に多忙の業務を抱える薬剤師の皆様に、出来るだけ多くの研修の機会を提供すべく、研修内容は全てWEB上での学習が可能となっています。すなわち、コンピュータがインターネットに接続されていれば、いつでもどこでも学習が可能です。さらにコンテンツは学生時代に慣れ親しんだ講義形式となっており、その上受講者が重要と考える箇所は、繰り返し聴講することが可能となっています。受講者と講師との双方向性応答も可能です。コロナ禍において、大学ではオンライン講義形式が積極的に取り入れられ、コロナが収まりつつある中でも、全てが従来の対面式講義に戻ることなく、オンライン形式の良さを生かしたハイブリッド形式が採用されています。学会や会議等でも、オンライン形式が常識的に使用されるようになってきました。こうしたWEB上での薬剤師研修は、今後益々国民の医療の向上に資すると考えられます。ファーマストリームの現状は、お蔭様で大変好評であり、2022年4月の時点で12,000人を超える多くの薬剤師の方々に登録いただいており、順調に運営されています。今後も講義企画内容を更に充実させ、引き続き薬剤師の生涯教育に貢献できるように、尚一層の努力をしていく所存ですので、本システムを引き続き御活用いただきますよう、お願い申し上げます。